黒バス_24

 
 
 
※黒バスで赤黒です。
※タイトル通りにボーダーを越えるところです。
※赤司君側と黒子っち側となっております。
※なにか問題が?
 
 
 

【PDF版】<<※作製は未定です>>

 
 
 
<お願い>
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境界線を越えてみた。side-A
 
 
 
 赤司は黒子のことが好きだと言った。
 さっぱりと告白し、アプローチに勤しむのにためらいなどなかった。欲しいから手に入れようとするのは当たり前のことだ。
 そういったことはいくらも考えつくのに、どこをどう好きなのかと問われると答えに詰まる。友人という立場から大幅なシフトチェンジをしていたのだが、そのポイントが自分でもよく分からないのだ。ならば代用や他を当たればいいかと思えば否で、違うのは認めないと断固として首を縦に振らない一人っ子ならでは我が儘さでこれはもう意地になっているのではないかとも考えられた。比較的早い段階で、ギアがステップの域内を越えたことを知ったのだが、かといって自分の中にはクラッチなるものがない、いや、失ってしまって、———そして、こじれた。
 高校の三年間は、撚れて拗れたものを正常化する作業に費やされたと言ってもいい。
 だから、改めて自分もだと黒子に返されたときは、どこか懐疑的に凝り固まり、お前のそれは違うだろうと言いそうになってしまった。満願成就したという奇跡的な出来事に素直に喜ぶどころか、呆れられ、怒らせるという始末だった。彼の氷点下を越えた『キミはボクに好意を押しつけるだけ押しつけたかったんですか』という言葉は忘れない。
 だがしかし、なかったことにはならない。
 なにしろ一人ではどうすることも出来ないことだからだ。
 
 
 好意を寄せ合っているのだから、行為に問題はない、はずだった。
「あの」
 諸肌脱ぎで押し倒されたような格好の黒子が恐れながら、とでも言うように挙手をする。
「あの、ちょっと待ってくれませんか、赤司君」
「ん?」
 この状態で、さらにこの上もない良い雰囲気で焦らされるとか。ははは、無理だな、それは。いくら相手の頼みでも、呑めない、…だからして赤司の手は止まらずに腰から衣服の中へ進んでいく。
「うっ」
 出迎えたぬるい体温と、手触りはどこか吸い付くようでもあり、舌や唇で確かめたくなる。
「ちょ、赤司君、赤司君」
 じたばたと手足を動かす、何を今更。こちらの理性をこてんぱんにしてくれるような熱烈なキスをしておいて、そわそわと指の間を行き来するゆびさきもこれ以上を求めているとしか受け取れなかった。
「ボクはどうしていたらいいんでしょうか…」
「どうって」
 急に萎えて嫌になったのかとぎょっとして顔を上げる、相手は冷めているどころか、どこか興奮した熱っぽい顔つきで赤司は思わず唾を飲み込んだ。いつも静かに怒ったり、悔しがったり、闘志を燃やしたりした、滅多に見られないこれには色が宿り、背中の腰の方からじりじりと引き攣ってしまう。
「このまま思うように善がって、啼いたり、感じてくれれば」
 あらゆる技巧を尽くしてでも上らせてやろうとこっちはその構えである。いかんせん、ぶっつけ本番、経験不足であることは否めないが、脳内シミュレートにおいてなら万全だ。
「は?」
 ただ、反応を確かめながら、ということになってしまうのだがこれは致し方ない。全面積の少ない相手のポイントは見付かりやすいのだろうが、しつこく攻めると損なう羽目になる、それは避けたい、でもこの腰とか背中とか貧弱というのではないが薄すぎる。
「ボクだけが?」
「そういうわけでは」
 たっぷりイイ顔とイイ声を拝み、さらにこれを貪って浸るのであるからして相手だけが、ということには決してならない。まったく、近付く度に触れたくて、体温を感じるごとちりちりして、これまでどれほど堪えたことか。あれはまさしく修行だった。なので緊張されてはいるものの、肌に触れても蹴られも殴られもしない安心感は抑えていた気持ちを一気に解放させてしまう。膨れあがって痛いくらいの股間は、窮屈なところから出たがっている。
「こんな…君に舐められたり、散々吸われたりして?」
 どころか、ずらしている下着を引きずり下ろして、性器をまさぐり、いろいろと混じり合う。とろかして思うさま堪能するつもりだが、変更する予定はさらさらなく、性的な高ぶりと羞恥による困惑との間にいるような相手が顔色を変えて拒み、引いたらどうしようくらいまでは考えている。
「赤黒の掟だろう」
 でも逃がさない。
 こんな時間も惜しくて頭髪に口づける。
「れ、例外を認めないみたいに言わないで下さい」
 そっちこそ心外みたいに言うな。
「そもそもお前を前にして性的に興奮するのはオレのが強い」
「言い切るとか」
「喘がせたいし、チラつかされたら舌なめずりだってするからな」
 二の句も告げられない、というように口を半開きにまじまじと見詰め返してくる。
「テツヤは?」
 開き直っているわけではないが、焦れったいのもあって首筋に顔を埋めて舌を這わせた、ひゃっと肩を聳やかす。ほのかな体臭と筋肉の張り、どこもかしこも味わえるものだなと思いながら服を脱ぎ捨てる。
「……その、出来るだけ楽に済ませられたらというか、キミの顔にはぐっとくるので」
 率直なそれは胸に突き刺さった。というか、後半は見事に貫いた。
「かなり、ぐっときます」
 黙って顔を覗き込むと目を逸らす。口元を押さえ、息を吐き、
「反則ですよ、もう…」
 もう、と手を伸ばして髪を撫で回す。相手の顔は耳まで赤かった。どんな顔かなど自覚もないからそろりと目で窺うと当たり前みたいにキスで返してきて、ぞろ腰から下がざわめき、体中の血液が沸騰しそうになる。
「…くろ」
 キミは、と相手は言った。
「たとえる、ならば、頭から全身にフェロモンを浴びたように、思えるので、…ボクには」
「オレには熟れすぎていますぐ食わないと一生後悔するような貴重な果実だ」
 どっちもどっちなような気がしたけど、どうなんだそれはと笑った。陳腐な物言いでしかないのだろうが、恋愛にうつつを抜かした人間はありきたりに思えるようなことが特別に輝いて見えるものなのだ。
「すき」
 成就したその先は、決して楽しいばかりじゃないのに。
「……」
 舌でとろける。
 そして味はやみつきだ。
 
 
 
 
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 これが淡く消えないように。
 完結しないから期待してしまう。
 
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side-K
 
 
 
 黒子は赤司が好きだった。
 尤も最初は沢山の好きなもののなかの一人ではあったのだが、彼と会ったあとで物足りなさを覚えたときから、様子が違うと気付いたのだ。
 近いのにどこか壁を作ったりする、勝ち負けに関することには真摯と向き合うのにどうでもいいと判断すると投げ遣り、見向きもしなくなる。薄情というよりも、たやすく関心を失ってしまえることに、黒子は不安を感じた。広いはずの世界を己の意思一つで狭めているような気がして、それが正しいのだと信じ込み、実践していく彼の背中はぴんと張って、頼もしいようでもあったけれど、寂しくもあった。
 だから、彼が説明できないような恋に落ち、その相手が自分であると告げたとき、驚きはしたけれど、安心した。
 赤司の内部でどのような葛藤があり、それを克服していったのかは分からない。ただ、思春期特有ともいえるすったもんだがあって、知ったのは世の中には説明不要な物事が多くあるということで、それでいいものなのだと高校三年を掛けて学んだ。
 腕を振り、足を上げて地面を蹴る。そんな一歩一歩を重ねて、黒子は彼に辿り着いた。ゆっくりと、それこそ発酵を促すように時間をおいたわけだから、ああそうなのか、と自覚したときには伝えるにも手遅れなような気がしてまずは謝ったと思う。
 彼の返答は短い、うん、とそれきりでまったく信じていなかったことにこちらがイラッとした。
 でもって終わりでなく、やっとスタートというわけだ。
 好きだ、と臆することなく発信し続けた想いは身の内に溶け込んで、返却を求められても取り出せないくらいになっている。
 
 
 好意を寄せ合っているのだから、行為に問題はない、はずだった。
「あの」
 上手く回らない舌をどうにか動かしつつ、黒子はそっと挙手をする。
「あの、ちょっと待ってくれませんか、赤司君」
「ん?」
 などと、いかにも物分かりのよい返事をしながらも相手の手は止まらずに腰から衣服の中へ進んでいく、何というか、その手つきは既にいやらしく、背筋をぞぞぞ、とさせるのだが黒子はそれが厭わしいわけではない。
「うっ」
 赤司の掌には固いところがあって、それがつっと軽く押すような感触を残していくから過剰に反応してしまう。それは脳からの司令ではなく反射だった。
「ちょ、赤司君、赤司君」
 どうにか手と足を動かす。難なく釦を外し、押し倒しながら肌を辿る。点検するかのように手と口で愛撫し、胸元を吸い上げては、押し潰す。長く深い口づけの延長としては順当とは思うのだが、困る。その、相手の態度に盛り上がっており、もどかしく腕が背中に回るくらいには興奮してしまっているのだ。
「ボクはどうしていたらいいんでしょうか…」
 落ち着かせたくて仕方がない、何しろ頭がぐらぐらしてひっくり返りそうなのだ。困る。
「どうって」
 と、音を立てて肌を吸い、ゆびは腹を触れ、そのままゆっくりと爪の先が腰から背筋を撫で上げていった。うわっと思ったと同時に足が開いてしまう。さらには身体の芯に熱が集まるのも感じている。これが晒されて相手のものと擦り合わされたりするなんて想像しただけでも高まる。
「このまま思うように善がって、啼いたり、感じてくれれば」
「は?」
 それはない。
「ボクだけが?」
 そりゃもう色んな角度から相手を眺め放題で、それはそれで眼福ではあるけれど彼は己の豹変振りをまるで自覚していないのだ。自分に目を向けるときほんの少しだけやさしく弛むくらいは知っていたけれどそれは気を許しているというくらいの範囲で、そこに恋仲の甘さというものを足してしまうと突っ立っているだけでも害があるように思えてしまうのだった。射殺す、というか、そそるというか、老若男女を問わずぼうっとなってしまうというのを黒子は経験で知っている。黄瀬は普段が機械じみた無表情さだからとギャップが大きいのだと言っていたが、とりあえず見知った人間でさえ赤司の表情には目を瞠ったりしている。そんなのをずっと差し出されたりされていれば、見ている方がおかしくなるのは間違いない。
「そういうわけでは」
 形の良い湿った唇が自分の輪郭を撫でていく。手を伸ばして触れていたくなって———。
 赤司とはしたい。しかし、気持ちが繋がった彼と自分が、近いのに遠く感じるなんてことは絶対に嫌なのだ。赤司に限ってのことなので、それは譲れない。
「こんな…君に舐められたり、散々吸われたりして?」
 自分は彼にとって性愛の対象であり、自分だってそうで、だから、何かの施しだとか善行の褒美ではないのだから恭しく口づけとかそういうのは嫌ではないけど、苦手だ。もちろん供え物でもない。
「赤黒の掟だろう」
 真顔で言われる、あと、声も響き方が余韻を残し、スプーンひと匙ぶんの隠し味でも混ぜたかのようだ。
「れ、例外を認めないみたいに言わないで下さい」
 とは言うものの、上半身の衣服は剥かれ、寛げた下肢も相手のゆびの進入を許しているのでこれをひっくり返すのは至難の業だ。
「そもそもお前を前にして性的に興奮するのはオレのが強い」
「言い切るとか」
「喘がせたいし、チラつかされたら舌なめずりだってするからな」
 それはこちらも負けないと断言できる。赤司が知らないだけだ、黒子が秘めている欲情なんて彼は知らない。
「テツヤは?」
 左手で足を持ち上げ、右手は股間の中心を避けて鼠径に留まる。肉を掴むようにし、親指の腹が窪みを擦る。脇をガッチリと押さえつけられているから逃げられない。こちらをどうにかするだけで赤司は退屈を覚えたり白けたりしないのかと、思う。焦れたように赤司は首筋に顔を埋めたと思うと襟足の後ろから舌を這わせてくる、腰ががくんと揺れた。赤司は服を脱ぎ捨てると、物欲しそうに頬を撫でる。甘えと、媚びが混じったようなあざとい仕草だって甘美な誘いにしかならなかった。
「……その、出来るだけ楽に済ませられたらというか、キミの顔にはぐっとくるので」
 楽というのはお互いに苦痛を感じないという意味で、懲り懲りな結果というのを考えたくないからである。嫌なわけがない、思わず相手の手に手を重ねた、無理に堪えようとしてもふっくらとした下肢がぶつかって唾は口腔内に溜まっていく。
「かなり、ぐっときます」
 主張する、でも相手の顔を真っ直ぐ見られなくて目を逸らす。脳裏に消えない表情に疼かされている。相手の姿は部分的にも目に入る、それだけなのに煽られていく、口元を押さえ、そっと息を漏らした。
「反則ですよ、もう…」
 まだ接することに慣れている頭髪に触れる。そんな顔見せられたらイチコロなんです、なんて教えたところできょとんとするに決まっている、どうでもいいほどに好きだ、キスしたくなってしまうのもしょうがない。
「…くろ」
 キミは、と遮って続けた。
「たとえる、ならば、頭から全身にフェロモンを浴びたように、思えるので、…ボクには」
「オレには熟れすぎていますぐ食わないと一生後悔するような貴重な果実だ」
 あんまりにもがっついているような台詞だ、仕方ない年頃と間柄とはいえ、どうなんだそれはと二人で笑ってしまった。
 その先に踏み込んだとして、この恋はなかったことにはならない。
 彼にスプーンひと匙の要素は。
「すき」
 世界を豊かにする。
「……」
 舌でとろける。
 そして味はやみつきだ。
 
 
 
 
 

150920 なおと

 
 

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恋は『思い込みと勘違い』だとか聞きますが大いに結構ではないかと。
大量にエネルギーを費やせる時期に失敗とか含めてしとくことはしとくべきだと思います。
ズレたところのあるうちの赤司さんはヘタレですみませn…。
設定では間違いなくハイスペックの万能型なんですけど、おもしろくな…あ、イヤイヤ。
ヘタレ攻め好きなんです、男前受け子は素晴らしい(王道とも)。
考え方は対照的っぽいと思うんですけど、一人じゃないから引っ張り合って前向きに進むんだろうなー。
今年のイグ・ノーベル賞、いいですねえ。
恋人とのキスはアレルギー反応を軽減させるって、乙に素敵。