黒バス_27

 
 
※赤黒です。
※VS京都 round2は学祭の後編(前編は黒バス_26)です。
※彼らは勝手に三年生です。
※思ったより長くなってしまったため、前後編にしてます。
 
 

【PDF版】<<※作製は未定です>>

 
 
 
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VS.京都Ⅱ
《後編》
 
 
 
 よく分からないけれど、京都駅に到着し、まだ眠そうな幼馴染みの腕を引っ張り、右か左かと通路を見回していると黄瀬涼太が大階段のところで待っていた。
「あ、よかった。桃井っち」
 現役バスケット選手兼モデルは爽やかな笑顔で乙女達の秋波を浴びまくっている。
「オレもちょうど神戸から着いたとこなんスよ」メールしようと思ってて。
「あ、そうなんだ」
 黄瀬は予め待ち合わせしておいたような気軽さで、桃井さつきは事情も何も知らされていないから、答えつつも内心では首を捻るばかりだ。赤司も黒子も黄瀬が来るなんて言ってなかったし、自分も彼に話した覚えはない。というか、黄瀬の学校ではこの日は記念式典だったかの学校行事にぶつかっていたはずで、休んじゃったの? でなければ、バスケ部で遠征だったりするの? あれ、でもそんな情報あったっけ? とか実は頭に無数の疑問符が飛んでいたりしている。
「青峰っち、久しぶりっスねー」
「つか、なんでテメーがここにいんだよ」
 青峰がまっとうな疑問を投げかける、ものすごく面倒そうだ。
「やー。撮影だったんスけど…、黒子っちが京都に来てるって聞いて」
「誰から?」
「えーと、誰だっけ、赤司っちの知り合い? 洛山のひと?」
 目は泳いでいないが、その情報はともかく発信元についてはまるで覚えていないのだろう、黄瀬は明るく笑う。
 洛山チームは本日もれなく練習中です、と桃井は思いながらそうなんだ、と無理矢理に笑みを作った。その、学校を休んでまで来たはずなのに撮影を放って来ちゃっていいのかな、何かトラブルでもあったのかなあ、と言えずにもじもじしてしまう。日頃から情報収集は頑張ってはいるけれど、黄瀬が『バイト』として位置づけている業界の事情までは手が回らない。
「撮影は平気なの?」
「ヘーキ」
 子供みたいにあどけなく、素直に頷く。ちょっとだけその無情とも言える残酷さが見えた気がした。
「あ、行き方教えてもらったんスよ? バスかタクシーって…」
 嬉しそうに続けるのを遮った。すでに行き方は調べてあって、ただバス停の場所までの行き方が分からないのだ。待ち合わせは学園祭本部のゲートのところ、賑わっているだろうし、バスを降りた後で人の後を着いて歩けば大丈夫だろう。乗車したら赤司と黒子に連絡を入れる、彼らの事だから早めに来て待っていてくれるはずだった。
「北大路行きのバスだって。あと五分もないよ」どこかな。
 黄瀬はたぶんあっちスよ、と信じていいのかな曖昧な事を言って桃井と青峰の腕を引っ張って歩き出した。
「え、合ってる?」
「K大はあっちの方って、お姉さんが言ってたスから」
 えええ、と声を上げたところでバスターミナルが見えた、やっぱり東京とは違うバスなんだ、と思いつつ覚えておいた系統番号を探す。黄瀬も身長を生かすべくぐっと首を伸ばして協力してくれているが、青峰だけは寝坊し、新幹線に乗り遅らせた本人に関わらず反省の色もなく、一人だけ違う風に吹かれているかのような様子で携帯電話を耳に押し当てていた。
「おー、赤司。腹減ったんだけど。つか、なんで黄瀬がいるんだよ」
「ちょっ、大ちゃん!」バス!
「あったっスよ」間に合いそう!
 黄瀬が指差して走り出す、桃井は慌てて追い掛け、青峰はというと、一応のポーズみたいに駆け出したはいいが、進む列が間近になったところでぴたりと足を止めていた。
「…あ?」
「大ちゃん!」
 桃井は振り返って呼ぶが、相手は煩がるように手を振るだけだった。
「何でテツが。んだよ、そのショーニンって」
「テツくん?」
 眉が持ち上がりかけてぴっと下がった。ちょっと嫌な予感がして、そんなまさかと頭から追い払う。彼はたまにだけど持ち前の正義感と行動力で誰もがあっと驚いてしまうようなことをさらっと実行する。ミステリアスで、ギャップもきゅんとくるけど、男らしく危ないことも割と進んでいってしまうから、信用とは別に桃井としてはそれが心配だ。
「…はっ、テツだわ。で、どーすりゃいいんだよ? え? 今、駅のバス停んとこ」
 青峰はちょっと笑って、桃井の方をちらと見る。
「……」
 列の後方に到着している黄瀬が不思議そうにこちらを見ている、青峰は雑に乗んな! とだけ言うと再び携帯電話を耳にする。表情は深刻そうでもないけれど、最後の方は胡散臭いような顔はしていた。
「また赤司君、勝ちすぎちゃったとか…?」
 彼は中学の文化祭で、校内のゲーム勝負をあっさり制覇した。次は大学生相手にと彼なら成し遂げそうな気がしてしまう。
「どーしたんスか?」
 黄瀬がやって来る。その後ろをバスが走っていった。
「ギョエン? あー、とにかくさつきに代わっから」
 携帯電話を手渡された、受け取ると赤司は詳しいことは青峰から訊いてくれ、と言って、ただ乗り換え案内だけを伝えた。『悪いが京都駅から烏丸線に乗って今出川で降りてくれ』とそれだけだ。いつも通りに淡々とした声ではあったけれど、どこか落ち着かなげで切った後にあれっと思った。
「…烏丸線の今出川だって」
「カラスマ?」
 黄瀬はきょとんとする。地名なのだけど楽器の親戚かとでも言いたげでもあり、愛嬌があるなあと思わず感心してしまった。喜怒哀楽がはっきりしていて、爽やかなイケメンというのはどこにいても目立つものだ。
「詳しくは青峰くんに訊けって」
 どこか突き刺さるような視線も痛いから先に駅に向かって歩いている青峰の背中を追い掛ける。彼は先んじているけれどその烏丸線がどこにあるのかを知らないはずだ、携帯電話をぶつけるようにして肩に押し当てた。これはどうしたことか、きちんと聞かねばならない。こほんと咳払いをした。
「どういうことなの?」
「何なんスか?」
「…ま、飯は赤司のゴチだ」
 そこじゃない。
「じゃなくて」
 ずいっと黄瀬が青峰に並んで言った。どことなく喧嘩腰だ、桃井は二人の二歩ほど後方を歩くことにする。とりあえず仲裁はしない、テツくんがどうなったのか、どうして行く方向を変更しなければならないのか、知るまでは黄瀬側につくつもりだった。青峰は小さく舌を鳴らしてから、仏頂面で言う。
「…テツが、法廷に出てて、生き証人を引っ張り出さなきゃいけねんだと」
「……」
 二人とも考える時間が必要だった。
「へ?」
「なにそれ?」
 オレだって知るかよ、と投げ捨てるように青峰は応え、自らインフォメーションセンターに突き進んで行った。
 
 
 黄瀬は何だかなあ、と空を仰いだ。晴れ渡り、空気も澄み切って良い青空だ。
 待ち合わせた地下鉄の駅で赤司と合流すると、二手に分かれ、ここをこのようにして変梃な格好をした男を捕まえる、と言われた。曰く、黒子を救うのに大事なことなのだそうだ。そもそも黒子はどうしてそんなことになってしまったのか。
「…て、赤司っちから聞く限り、オレ達が捕まえるでもなく通報されるっスよね、その男」
「だよな」
 と、豆大福を咀嚼しながらそこは青峰も同意する。
 ちょうど二つの川が交わるという川縁の歩道を青峰と黄瀬は、遡上するように歩いている。デルタと呼ばれる三角州を正面に見たとき、左右はまるでシンメトリーといった感じだった。双方の川を一直線に渡す橋、そして川には飛び石と亀が点々と配置されている。赤司と桃井は逆に下流に向かって歩いてきているのだそうだ、落ち合った赤司が何故か使い古した自転車と一緒だったのには驚きだが、なりふり構っていられないんだ、と彼は冗談なしに言ったからそうなんスか、とこちらは頷くしかない。すでにここに来るまで平坦だがそれなりに距離のある道を走って移動してたりしている。
「黒子っちがそんな男に唆されたりするっスかねえ…」
「テツはバニラシェイクで釣れるぞ」
 黄瀬はあー、と漏らす。空気を。青峰だって大好きなグラビアの子だったらどんな胡散臭かろうが『ハイヨロコンデ!』となるに決まっている。人間、好きなものには弱い、格好が変梃だろうがそいつが黒子に対し影響力を持っていたのは確かだ。
「法廷なんて、オレは面白そうとは思うんスけどね」
「……」
「青峰っちもそうだと思うんスよ、黒子っちだって思いも寄らなかっただろうけど、でも面白そうだから出るって言ったんだろうし」
「まーな」
「赤司っちと桃井っちとは真逆」
 青峰は川風になぶられて揺れる赤い花を眺めながら言った。
「テツが見せもんになろうが知ったこっちゃねーよ、あっち側の奴は真面目過ぎてこっちが疲れるだけだ」
 黒子が楽しいならそれでいいし、けれども、彼の存在は自分や青峰達にだって重くて大事だ。光の差す場所は明るいだけ残酷で、あたたかいだけ、無情だったりもするから簡単に大切な影である彼を光の前に出したくないと子供みたいに思ってしまう。きっと赤司は嫌で、桃井は心配で、青峰も気に入らないのだ、黄瀬と同じく。だからわざわざこんなことをしている。
「またまた」
 ごすっと脇腹に無慈悲な一発が入る。うっとなる、的確なだけに。
「納得いかないから出るって言ったんだと」
「サスガ黒子っち」
 わかった、もう何も言わない。彼なりに考え、理由があって、その疑似法廷とやらになったのだろう、学園祭のイベントとしてそんなことをやるなんて初めて知った。K大だろうが何だろうが外国人にさえ向き合ったくらいなのだから大学生だって恐るるに足りないくらいに違いない。国内トップクラスの大学生だけど。
「弁護士役にとっては丁度良かったのかも知んねーし」
 赤司からあらかたのことは聞けた。黒子はキャンパス内を闊歩する怪しげな新人作家に唆され、頼み事を引き受けたばかりに学園祭実行委員長に楯突くことになって、疑似法廷に引っ張り出されることになったそうな。赤司はちょうどそのとき一緒ではなかったらしい、交渉を試みても実行委員はもとより、その法廷関係者では埒が明きそうにもないから元凶を引っ張り出すことにしたと言った。別行動を悔やむより行動するのが本当に赤司らしい。
「黒子っちがっスか?」
「逆転無罪っての」
「あー。ゲームみたいな」
 真実を暴くみたいな話は法廷もののお約束だ、冤罪はダメ、そういうときは確かに無害そうと小悪党と間の感じの役者がとても不利な状況を持たされて俯いていたりする。黒子はキャスティング的にぴったりだというのか、無罪を主張する黒子も想像するとそれはそれでなんかいい…。
 そんなことより、と妄想を踏みにじるかのように青峰は残りの大福餅を平らげては言い放つ。
「赤司ってチャリ乗れんだな」
「馬だって乗るんだから、チャリくらい屁でもないでしょ」
「いや、さつき乗っけて」
「あー」
 一番軽いんだから当たり前、というように座り心地は悪いだろうがと赤司はぽかんと自転車——それも油が足りてなさそうなママチャリだ——と赤司を交互に見る桃井に申し出た。半拍ほどおいて桃井はあ、はい、と快諾し、二人はぎしぎしと音を立てながら川を遡上してすぐに見えなくなってしまった。赤司は高野川を遡上し、やや下ってから鴨川沿いに渡ると言っていた。傍目から見ればあたたかく見守ってもいい秋空の下の青春野郎の構図だけど、桃井と赤司でぎちぎちな責任感みたいなものを漲らせていたから注意されるかもしれない。
「あー…」真面目な方だから。
 どころかもう、他人など眼中にすら入れていないんだろう。
 青峰は大福なんかでは足りないと言い出し、見付けたコンビニに勝手に離脱する羽目になる。どちらともなくあ、トイレ、と思ったからというのもある。二人並んで京都の川を汚したら赤司に呪われるに決まっている、というか、そういうのは見晴らしからして無理だ。川面は流れが緩いのか、きらきらしている。川岸は広い方だ、京都らしい風情は感じられないが山の方は秋っぽくて悪くない。川縁に戻ってなんかいいなあ、と思った。ちなみに黄瀬は自分が賀茂川と高野川のどちらを歩いているのかなんて知らない、青峰も同じだろう。川風は冷たいが、日差しは温かで、隣が野郎でなければ心地よい散歩の趣だが、紙パックにストローを挿そうとしたところで現実が目の前に見えてくる。
「涼太!」
 キタ、マジスカ。
 つい、身構えてしまう。前方から走る人と、チャリ。
「大ちゃん!」
 逃すな、と捕まえて、の声が重なり、二人は見合う。青峰はチキンを囓り、こちらはストローと紙パックジュースだ。正面からは白衣の男が猛然と走ってくる、渾身の逃げ足のせいかこいつ、ランナーかと思えるような脚力をみせている。
「……」うわ、すっげ顔。
 と、思ってしまったので思わず引いてしまった青峰の気持ちも分からなくもない。川縁の数百メートルにも及ぶチャリ相手の追いかけっこなどどんな人間ですら苦しさに顔が崩れていくに決まっている。黄瀬だってここでイイ顔をしろと言われても無理だ。
「涼太! 大輝!」
「…あ、すません」
 怒鳴られて反射的に謝る。
 ぎゃっぎゃっとホイールあたりが分解しそうな音を立てて二人乗りのチャリが黄瀬と青峰の間を過ぎていく。外国からの観光客だろう疎らに歩く人たちがぼうとこちらを見ていた、とりあえず名物でも何でもないことを彼らはわかっているようで写真は撮らない。
「大ちゃんの役立たず!」
 桃井の罵声は川風に乗る。それに呼応するように川を渡す橋に法被を着た男が姿を現した。気付いて横を突く、
「青峰っち」
 追い掛けるのもうんざりだと言いたげだった青峰は煩そうに顔を上げ、ごくんとチキンを飲み込んだ。
「…んだありゃ?」
 鮮やかなタックルで白衣を仕留めた赤司達を指し示しながら何かを叫び、どどどどと押し寄せるように法被と学生服の集団がやって来て、彼らを取り囲む。また様相の違うのが追ってきてシュプレヒコールを上げては何故か潔く去った、そっちは私服だ。気の毒な桃井は肩を竦めたまま目を白黒させていた、危ないと思うが騒ぎに揉まれず女子高生はお姫様扱いで、ほっとする。赤司も言葉も出ないのか、法被の中でもどこか偉そうな男にひしっと固く握手されたままになっている。
「うわー…」
 近寄りがたいが、近付くしかない。赤司の腕に半分潰れた狐の面がぶらぶら揺れている、それが水面に弾ける光を受け、どこか迫力があって怖かった。
「あれが〝生き証人〟ってやつなのか?」
「ッスね」
 赤司の言うように変梃な格好ではあるが、少なくとも顔つきはバカげたことを進んでやらかしそうではない。でも、公衆のマナーとか良識だとかを頭から振り払い、目を見開き、眉を歪ませた必死の形相で鼻水と涎を垂らしながら川縁の歩道を走り、いたいけな黒子を騙すとかをいけしゃあしゃあとやってのけるのだ。やや遠目にまとまりを見ているとざわりと中が揺れた。
 偉そうな法被男が捕らえられた白衣に一喝する。
「こんのバカ兄が!」
 白衣は負けじとせせら笑う。
「遅かったな、愚弟よ!」
 こいつら兄弟で何をしているんだ、と思ったところで、白衣はショーマストゴーオンだ、ざまあ! と高らかに宣言すると身体を捻るだけ捻って緩んだ拘束を振り切り、川へと駆け込んだ。水に入るには躊躇う季節に黄瀬もぎょっとする。
「あっ!」
「神妙にしろ!」
 怯むことなくわらわらと学生達も川へ押し寄せていき、ペンギンの蹴落とし合いにも似た押し合いへし合いをし、浅瀬ですったもんだをやってから、水浸しの白衣を毛布でぐるぐる巻きにした。
「……」
 もはや黄瀬と青峰は引き、赤司も桃井も目が点になっている、少なくとも高校生にはいろいろと馴染めない状況を愉快がるゆとりはなかった。
「…つーか」
 すぐに我を取り戻した赤司が偉そうな法被男に話しかけているのを見ながら青峰はぼそりと言う。
「頭良すぎる奴は一周回ってバカなのか?」赤司といい。
「あー、それ思ったっス」オレらが言えることじゃないスけど。
 何にしても赤司の忘我といった顔はレアである。
 
 
 とにもかくにも、黒子参加の疑似法廷は満場での快哉の響きをもって無事に閉廷した、らしい。
 飛び入りの陪審員がいるとか、『法廷』の名前をつけただけの茶番でしかないのだが、それでも検事も裁判官も弁護士も黒子の存在をどこか置き忘れもしたが、役割を全うし、『和解』が成立した。会場は予想以上に盛り上がったそうで、座布団が飛んだという。ありえない。そもそも民事ではなかったか。黒子も納得しましたから、と言ったから予定調和的解決に丸め込まれただけだろうが、彼が解放されればそれでいい赤司は黙殺する。話を聞いた桃井は見たかったなーとぼやき、黒子の横でうどんを啜っていた。
 遅い食事をとっていると改めて実行委員長から赤司はテントに招かれて礼を言われ、そして本部の小部室に連れられた。中では腕章をつけた学生達が立ち働いている。部室めいてはいるがどうも組織の中枢らしい、配置されたものは書棚も急造の寄せ集めとは違う風合いを帯びていた。入って左側の壁には『学生の自主性を』なる扁額に飾られた毛筆の言葉がある。
「……」
 中央にある向き合ったソファーにはあの少年がいる。赤司を見ると何も言わず立ち上がり、知らん顔で出て行ってしまう。薄ら寒い何かが首元を撫でていった、赤司は正体の分からないそれについて考える。
「彼はいったい…?」
「迷子だよ」
 と突き当たり窓側の椅子に座った男が言った。人当たりの良さそうな大人しそうな顔つきで、それに似つかわしくない甲高い声がどこか人形めいている。
「黒子くんか。これは逸材だな」
 続けたのは書棚の前に立っている男だ、ファイルを見ている。
「我らが学生自治には有益と見る」
 こくりと別の男が頷いた。
「彼は東京もんや、当然東の雄を志願するやろ」
 パソコンを弄りながらぼそりと小太りの男が言うのを、ファイル男が否定する。
「いやいや、そちらならそちらで我々にも手がないわけではない」
「…黒子に用なら呼びますが」
 彼なら青峰達と模擬店を冷やかしているはずだ。予定よりもかなり遅くなってしまったが、次は同じ通り沿いにあるD大見学に行くつもりだった。
 甲高い男は、用があるのは君だよ、と答えてじっと赤司を見る。
「嘆くも笑うも好きにすればいい」
 キーを叩く音をさせながら小太りが繋ぐ。順番もなく誰も彼もが勝手に話しているが、話題は黒子のことで、顔には出さないが内心では触れてくれるなと願っている。
「大学という社会の砂漠の前の箱庭は自治統括する我々の砦だ、彼の身柄は我らのものと心得えよ」
「ないと思いますが」
 彼は関東の大学に進学を希望している。まかり間違っても分野の違う学科がのさばっているようなこの大学に用はないはずだ。そうかもなあ、と長身の別の関西のアクセントが応じた。本気とも思えないような緩い合いの手だった。
「つかここは天才かバカのどちらかしか居らんで」
「学生自治は阿呆ばかりだがな」
 眼鏡の男がスマートフォンを手に皮肉に笑う。室内の空気にぴりと電気が走ったような気がした。
「まあ、そんなことはまたでいいさ。問題はそこではない」
 甲高い声が楽しそうに言う。
「おや、谷川さんだ」
 と、気付いたように上がった声があり、全員が一斉に窓の外に目を遣る、何てことのない往来で、のろのろと人が動いている。赤司はそちらを一瞥してから改めて室内を見た、女子学生が二人ほど居て、揃いのジャンパーを着込み、無言でモニターを見ている。同じ空気の中に居るのに違う世界の住人みたいに一貫してこちらの話題には知らん顔だった。
「え、どこ」
「ベンチの向こう。こっちに向かって来ている」
「本日のヒロインだな。彼女は一年だし、担当氏にも言われたからそっとしておこう」
「……」待て、大学生ども。
 口元がひくつきそうになるがここは一つ黙ったまま佇んでいる。彼らには妙に自分や黒子のことを知られているような不気味さがあるのだ。それに小生意気な少年が居たことも忘れていないから、赤司は心の中で準備をする。この場でしくじるわけにはいかない。
「彼はいたって普通の高校生だった。地味で目立たないが、なのにヒロインを庇い、ゲリラ芝居を助け、瀕死だった企画を救ってしまった」
 窓の外を見ている男がぽつりと言った。窓際の椅子にいる方は赤司の方に視線を向け直し、また風体から予想できない声で言う。
「礼は必ず送ると伝えておいてくれないかな、赤司君」
「僕は実行委員の方からチケットをと」
 構内で使える金券のようなものだが、テントにはないから取りに来て欲しいと言われ、受け取りに赴いただけなのだ。新人作家は実行委員にとっては要注意人物だったらしく、密かに手配書が回されていたと実行委員長は渋面を作って語っていたが、何しろその新人作家とそっくりな顔なものだから、言われても説得力がなく、赤司はその人物をどうにも信用できなかった。しかし、あなたは油断ならないようだからと断るのも失礼だ。だから相手の顔を立て、とっとと済ますつもりで来た、寄越せとは言わないが、早々に切り上げたい。
「手配しています」
 女性の一人が告げる、発言は初めてだ。というか、秘書みたいだなと思ってしまう。
「時間が掛かるようなら要りません。予定も押しているし、行かなければならないので」
「ふふん、そうかい」
 甲高く、また楽しげに。そんな肩の先に動くものが目に飛び込んできた。
「…っ」あれは。
 小柄で、ふわっとした柔らかな印象の女子大生が黒子達の前に立つ、どうも小生意気なあの少年に誘導されたようだ、黒子がほっとしたように微笑んだのが見えた。紙風船を少年に持たせ、短い遣り取りをする、二人に面識かあるのかこの距離では分からない。女子大生の方は桃井や青峰達に丁寧に挨拶をし、黄瀬にも好みと違うのか至ってリラックスしたぎこちなさの欠片もない態度で、ゆっくりと黒子に語りかけ、謝意を表してかぺこりと頭を下げていた。そしてくるりと校舎に背を向けて軽やかに歩き出す。先に姿を消した少年の後を追っているようだった。
「知る時間はたっぷりあった」
 小太りが言い、長身の方が息を吐く。
「じゅうぶんすぎるわ」
 勿体ぶる言い様にしては耳に入る言葉は軽く、まるで気泡のようでそのまま弾けてなくなってしまいそうだった。時計を見遣るリアクションをしてみせたが向こうはまるで動じない。
 黄瀬に見せられた画像に気まずいような顔をして、黒子は三人に説明する。頬が紅潮気味になっているから恐らく、彼らが追い掛けて捕まえようとしたのは悪い人物どころか、きちんとした作家であることを伝えようとしているのだろう。青峰が何かを言っても首を横に振って受け入れない。
「後れを取るなよ、赤司受験生」
 ぱちんと何かが目元で爆ぜた。
「お前の居ない三年は彼をそれこそお前が引きつけて止まないものにした。驕るなよ、お前の力はそこには介在しない」
 甲高い声が赤司の視線と思考を遮る。
「……」
「才能がどうとかなるほどお前の影響は彼に大きく及んでいるのかも知らん。だが、現在の黒子は、彼が誰にも寄り掛からず、ひたすらに進み、着実に歳月を重ねて、己自身の手で積み上げていった成果である。あたかもお前の手柄のように言わないことだ」
 これはどこからの声だろう、赤司は窓際の男を見、辺りを見回した。返される視線もなく、誰もが入ったときと同じように己の仕事を黙々と淡々とこなしている。まるで永久運動みたいに。
「…言われなくても判っとるっちゅー顔してんで」
 アウェーだと感じたが、居心地が悪いことはなかった。まったくだ、と皮肉に嗤えただけだ。
「お前の手を離れたら予想以上におもしろいだろう?」
「そうですね」
 もう一人の女性が席を立って封筒を差し出してきた、表書きには『万歳』とある。頭を下げる、ではなく諸手を挙げる福助人形の絵柄が芋版みたいに封筒の下に押されてある。ユーモアなのか。
「……」
「大学なんて進んだらもっとだな」楽しみだ。
 疎ましくも朗らかに声は降る。
「有難う」
 窓際が立ち上がり、手を差し出してきた。形ばかりの握手を交わす。
「こちらこそ」失礼します。
 一礼して、背を向ける。内側にふつふつ沸いてくるものを押し止め、手足を動かすが、手の力は加減が甘かったようで封筒は固い音を立てた。彼と離れた、見ない時間が長くなって、知らない事も増えた。たった数年後の今、黒子はとんでもなく奇妙で食えないような奴らに目を付けられてしまっている。そうか、それはそうだ、いちいち偏狭的な嫉妬なんか抱えていたら相手は手に入るどころか持って行かれてしまう。
 言われるまでもない、もう一人の自分なんかより強力なのが踏み出していく場所には存在するわけだ。
 
 
 どうしてまたそんな裁判なんかに、と黄瀬に問われて、黒子は頭を掻いた。
「ボクも、その…早とちりだったんですよ」
 合流して〝何はともかく、まず食事!〟だった三人は食後の紅茶を楽しんだところで、黒子の言葉に拍子抜けしたような顔をし、それから弾けたように笑った。赤司はかなり動揺していたらしい、それが桃井に伝播して、青峰は何かヘンになった、とまとめる。赤司が不在だからこそと黄瀬が教えてくれた。
「立っているうちにばつの悪さも感じたんですけど」
 後の祭りというか、どうも周囲はそんなことはどうでもよかったようで、裁判は続いた。自分はなるほど、という気分になれたものだけれど一人の得心で済まされないのが法廷劇だ。抜けるわけにはいかなかった。
「電話をしたときは、公文書偽造だとか詐欺とか決めつけられたうえに表現活動の妨害かとボクもちょっと気が立っていたところもあったので」
「赤司が詐欺とかまずないって言ってたわ」
「そんで黒子っち濡れ衣?」
「違います」
 黒子が悪者だとか犯人にされたとかではなく、あれよあれよと訴えた側になってしまったのだ、勢いで。
「…赤司君に心配かけてしまいましたね」
「やり遂げた顔で言いやがって」
「まーいんじゃないっすか? 赤司っちの点目なんて初めてだったし」
 確かに珍しいどころか、まず見ないのでそれは見たかったですとも漏らしてしまう。自転車に乗っていたというのも実は驚いている、馬にも乗るのだから乗るだろうとは思うのだが。
「それより、テツくん。さっきの谷川さんと一緒だった子って知り合い?」
「はい、前にちょっとあって。紙風船が渡せて良かったです」
「そうなんだ」
 黒子が紙風船を差し出すと少年は、ちょっと驚いたような顔をして覚えてたんだ、と一人言ちた。
「雰囲気とかちょっと赤司君っぽかったよね」
「しっかりしてるとは思いましたけど…」
 そうなのだろうか。何しろ自分の記憶の中ではひな人形みたいな少女とセットになっているのでコメントしづらい。
「気難しそうなのは似てたっすね、赤司っちの小さい頃ってあんなだったかも」
「もっと目つきとか据わってんじゃね?」
「そんなこと言って。あの子きっと大ちゃんが怖くて行っちゃったんだよ、ごめんね、テツ君」
 青峰の代わりのようにして桃井が詫びてくる、少年のあのつれなさは人見知りと思われるだろう、本当に呆気なかった。彼らとはまた会えるような、もう会えないような不思議な気がする。
「赤司君が戻ったらさ、別のとこ行くんだよね? あのね、ちょっと行きたいところあるんだけど…」
「どこですか?」
 桃井の持っていた京都のガイド地図で『鴨川デルタ』とあったのを知り、またそこで彼らと作家先生の追いかけっこの顛末を聞き、次回作はどうなってしまうのだろう、と黒子はぼんやりと考えた。結局、ヒロインのひとも先生とは先輩後輩といったくらいで、詳しいことは知らないようだった。法廷にも間に合わなかったし、でも状況証拠として実況中継の動画は流されて、黒子も見せられはした。だが、赤司や桃井たちは映ってはいなかったから、実際に率先して追い掛けていたと聞いてびっくりした。二度の休憩を挟んで疑似法廷はとんとんと進んで行ったけれど、驚いたのが台本が用意されていたことだ、法学部のひとが過去の判例を繰り、リアルタイムでしゃかりきに書いていたそうな。まあ、裁判官役の人はともかく弁護士役の人は演劇サークルの人だそうなので裏では原告と被告側の弁護士役の人があれこれと話し合っていたし、引っ張り出された黒子はノリと臨場感に流されていたところもある。さながらぶっ通しの芝居とその舞台裏だった。原告と被告の弁護士と裁判官の三人が中心となり、疑似裁判は構成される。丁度良い置物か、たまに存在が消えていた黒子も休憩どころではなく、説明を受け続け、弁護士や書記官に助けて貰い、民事事件の面倒さを知ったりした、でも陪審員役がいて、検事も登場した。けれども彼らがいなければ分からなかった部分もあるので、補助的に挿入されたと思うことにしている。そもそも部外者の黒子が裁判に引っ張られたのは一般の目からも『尤もなこと』を『堂々と言った』かららしい。正しさを法的に通すのは簡単なことではない、それぞれの言い分が存在するからだ。個人的な意見だとか、子供の理屈など通用しない。それをあれは違う、これでもない、と楽しそうに行う大学生達は本当に生き生きしていた。だから疑似裁判の大成功は彼らの努力と熱量で成り立ったものと言える。
「…ね? 大学もそう離れてないでしょ?」
「観光客しかいねーだろ、しかもデートコースとか書いてあんじゃねーか」
「違うもん、お土産買うんだもん」
「これって遠いんだか近いんだかも分かんないっスよね、黒子っち」
 広げた地図を見ながらめいめいが言うのを遠い話のように黒子は眺めてしまう。去年は地図内の小さなエリアしか移動していないし、今年はまだ大学構内だけだ。なんて広くて深いのだろう。
「フラグ回収できたんでしょうか」
 呟いた。仕込み不発だったのだからこれ以上は遠慮したい。
「黒子っち?」
「あ。でもあそこの山が小さく見えますし、時間が掛かるんじゃ…」
 取り繕う、と、黄瀬が顔を上げた。
「あ、赤司っち」
「桃井、黒子、あっちでわらび餅を売っているそうだぞ」
「何か貰った?」
 赤司は黄瀬の問い掛けに無言でやや折れ曲がった封筒を振る。手渡された桃井は封筒の表書きに首を捻り、中からチケットらしきものを取り出して広げてみせた。
「……」
 うっと、一応受験生は揃って呻く。浮かれたところへ見事な突き落とし方だ。
「大学生協の商品券って…」なんスか。
「大学でしか使えねえってやつだろ」
「そんなもの存在するんですね…」
「なんかもうつらい。私、どうしようかほんと悩んでるのに〜」
 赤司は、何かを誤魔化すように息を吐いて、まあ学校になくとも組合の施設もあるし、何かと使えるらしいが、とあまりフォローにならないことを付け加える。
「教科書なんかは買えるんじゃないか?」
「赤司っち、そこじゃないス…」
「試合が終わっても励みになっていいじゃないか」
「お前と違ってそこまでマゾじゃねんだよ、オレらは」
「……」
 そこで生真面目に受け取り、考え込んでしまった元チームメイトを置いて、黄瀬と青峰は歩いて行く。封筒に商品券を仕舞って桃井も立ち上がる、地図と一緒に赤司に突きつけ、数瞬前のことは忘れましたとばかりの顔でにここに是非、と訴えている。
「青峰君、出たら渡って右だってー」
「行くのかよ」
 面倒そうだが青峰はそれに従うようだ。
「ちょっ、違う、渡ってから!」
 すたすたとてんで違う方向へ行く二人を桃井が慌てて追い掛ける、振り向くとちゃんと連れ戻すからねっ! となんとも心強いことを言ってくれる。頼もしい。
 取り残されたような赤司と目が合った。青峰と黄瀬と赤司で徹底的に噛み合わないところはある、黒子だってそうだ。でも、合わなくてもそれが当たり前で、弾き合ったりすることもあるけど、含めてひょいと越えて結局はみんながみんなで前に歩いて行くのだろうなと思った。
 それが当たり前と言っては当たり前なのだけど。
「行きましょうか、赤司君」
「わらび餅はいいのか」
 当てが外れたとでも言いたげだ。紫原君じゃあるまいし、と返すと違いない、と笑う。
「桃井さんの行きたいところに人気の甘味屋さんがあるんだそうです」
「ああ、前に玲央に聞いたことがあるな」
 思い当たるのか赤司は頷く。
 並んで歩く、耳の下が少し擦れたように掻かれ、筋状に腫れているのが見えた。
「……」
 彼が、自転車をこいで人を追い掛けたという姿を想像してみた、渦に巻き込まれたようだったとか、心配をしたとかそういうのも言い出さないのでどこで切り出して謝ろうかと考えてしまう。
「試合が終わるって、そういうことを考えると寂しくなりますね」
 赤司は己のための努力とかを黙々とこなし、他者についてもある一定のポテンシャルを要求するようなところがある。けれど、どちらとも両立するのは容易くはない、三年になって痛感していた。大変だろうなと思っていた諸先輩と同じ事を自分も今抱えて立っているのだ。
「とにかく勉強漬けになってしまうんでしょうけど、…ボク達はずっとお祭りの中にいたのかもしれません」
「祭り騒ぎの中か…」
 バスケは楽しい、彼らと戦える場所を目指して一心にボールを追っている。
「中学から、いえ、バスケと出会ってからずっと」
 赤司は少し黙ってから、黒子らしいな、と言った。
「何か含みがあるような感じですね」
「いいや、他意はない。同感だという意味だ」
「……」
「あの時計台に誓う」
「誓わなくていいです」
 本気なのか精一杯の冗談なのか。宣誓するのはボクの方ですから、と言って赤司を見た。相手はただ促すように歩調を緩める。
「まずはウィンターカップです」
「…うん」
「それから、君と同じとまでには行きませんけど、ラストスパートをかけます」
「『虎の巻』とやらに頼らずに?」
 また嫌なことを覚えているものだ、軽く睨むと素知らぬ顔をする。
「ボクはきっと最後まで、赤司君のこと見てます」
「……」
 赤司は無言のまま自身の耳の下に触れ、ためらうように腕を戻す。
「それは保障しますよ」
 大通りに出ると、からからと乾いた音がする。
 桃井の声がして、後ろから歓声とともに風が吹いて枯れ葉を巻き上げていった。
「ボクなりに歩いて、みんなのことを見ていたいので」
「…そう言うと思った」
 赤司の声は納得してもいて、どこか拗ねるようでもあった。続けて心配かけてしまったことを詫びると失態を暴かれたような顔つきになる。
「いや、それは、だから急に法廷とか」
 大会前にだとか、暴動など摸擬的な裁判ではないだろうがとかしどろもどろに言って空咳を繰り返す。心なしか少し彼の顔は赤らんでいるようだ、思いがけず、じっと見詰めてしまった。
「そういえばあの商品券、真ん中で折れてましたね」
「オレでも割り切りたくない事は多いさ」
 と、そこはきっぱりと応える。けれど黒子には言葉の意味が掴めない。何かあったのかと探ろうとしたのだけど、流石は赤司で、それ以上は聞けそうもない。
「テツヤがオレを見てくれるなら」
「はい」
「近くでならいいな、と」
「もちろんですよ?」
 今日は大学見学のためだけにとか、昨年の夏のリベンジ的なことを考えて来たのではない、あわよくば洛山高校バスケ部に潜入、そのための軽装なのだったりする。それが練習を放り出してくるなど調べまくった意味がなく、洛山のOBとどうにか連絡を取ったりしたことも水泡に帰している。だから京都駅で待ち構えられた時は徒労感を覚え、誰かを叱りつけたい気分だったし、後を引いた。言わないけど、そういうこと、メインイベントは自覚せずに目の前に立っている。
「とりあえず、またはぐれたりするのは勘弁でしたので」
 秋が過ぎたら、冬がくる。それも年を迎えたら受験一色だ。
 賑わうキャンパスの方を見遣ってからそうか、と相手は呟くように言う。彼にしては弱く、通過していくバスの排気音に散らされ、ざわめきにかき消えてしまいそうだった。
「終わったらキミに話すことがあります」
 赤司は何かを言い出そうとする、待とうとしたが倦んだような声で青峰の声が遮って、ひとまず一つの大学見学は終わる。
 
 
 
 後日発表された現役大学生作家の新作は、閉塞的な町に移り住んできた女性とそこで会う猫の話で、マラソン部のマの字もなければ王の存在などこれっぽっちも触れず、黒子はそれこそ地蔵のようになり、狼狽えた赤司が文芸誌を閉じてやり、好物を差し出されるまでノーリアクションだったという。
 
 
 
 
 

2015/10/28 なおと

 
 
 
 

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基本的にお前はマシンか、みたいな万能な赤司さんも好きですが、そんな赤司さんをぶった切るのがもっと好きです。
そんな彼は呼称「黒子」「キミ」を卒業し、「テツヤ」「お前」にしております。
(キミキミ言い合うのもあれなんで基本的に親愛の情をこめて「お前」を使うのが多いのですが)
一応戻ったと言われる『オレ』な方ですが、にゅるっと『僕』化しそうと思うのでしてます。

 

エセ関西言葉はすんません(西側アクセントは豊富だと考えます)。
『もやしもん』の自治寮の人達とか好きで、他の大学でも減ってはいるようですが、
確かにある学生ならではの組織で学祭でバカをやり合うのがいいよね!って作りました。
なのでK大の学園祭、及び構内での出来事はすべて捏造です。地図などを参考にしましたが、
曖昧記憶とだといいな妄想優勢なので正しくないです。
襖クラブは東大に実在します、なんか歴史が長く、職人さん並みの腕前らしいです。

 

青峰君は悪気がないです、火神と同等の悪気のなさ。
元相棒と、現相棒なのでそういう立ち位置にいて欲しいのかもしれません。
黄瀬ちんは調子よく傍観者でいて、さらりと奪う準備しているって感じです。報われないけど。
赤司さんの自転車ですが、借り物です。しゃかりきに漕ぐ、でも途中分解しそうなママチャリでペダルではない。
VS京都はまた何かあるかもです。京都行きたくなった。
ウィンターカップ予選は!とか突っ込んじゃダメっすよ(お約束)。